SHIBA建築工房の住まいの性能
performance
私たちは、日々を快適に過ごせる住まいを造るために「適度な性能」を大切にしています。性能とは、気密・断熱・耐震性能・耐久性などを指し、家造りに欠かせない要素と言えます。ですが性能ばかりを追い求めても、豊かな住まいから一歩遠ざかるのではないかと考えています。不必要に高すぎる性能値を目指すのでは無く、その地にあった最も「適度な性能」を考え、日本の四季と共住できる豊かな住まいを目指して設計します。
1 気密・断熱
冬は暖かな家。夏は最小限の冷房で過ごせる家。
これらを実現するために、高断熱・高気密をベースに、パッシブデザインで最適化を行い、少ない冷暖房エネルギーで過ごせる住まいを設計します。
窓を閉めれば、家全体をキッチリと閉じることができます。気持ちいい風を入れたいときは窓を開けるだけ。決して息苦しい家ではありません。花粉や有害物質など室内に入れたくないものを制御しやすくなります。
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気密性能について
相当隙間面積・設計C値は、 1cm2/m2以下とします。
施工時における目標C値は、0.6cm2/m2以下です。
横浜市は、比較的温暖ですが、省エネ住宅をつくるために気密性能は不可欠です。
気密性能が低くなりがちな引違い窓も採用
引違い窓は、室内と庭を緩やかに繋げるのに効果的な窓の1つで、古くから用いられてきました。しかし引違い窓は、気密が取りにくい構造を持ちます。この引違い窓を南側に用いることが多くありますが、気密性能・実測C値は0.3〜0.6cm2/m2の実績があります。
気密性能C値を向上させるために、屋外との繋がりを断つ閉塞的な住まいになるのであれば、人が心地よく暮らせる住まいになるのだろうかという疑問がわきます。地域性を考えた、ほどよい高性能がこの気密にも言えます。
【解説】C値とは:
建物全体に存在する隙間面積[cm2]を延べ床面積[m2]で除した数値。
この数値が小さいほど、隙間が少なく気密性能が高いことを示します。
隙間面積には玄関ドア・窓の隙間も含まれます。
気密性能が高いこと(高気密)の利点
- 窓を閉めれば、家全体をキッチリと閉じることができます。気持ちいい風を入れたいときは窓を開けるだけ。決して息苦しい家ではありません。花粉や有害物質など室内に入れたくないものを制御しやすくなります。
- 冷暖房の電気代が安くなります。高気密の建物は窓を閉めれば、家全体の隙間が僅かのため、エアコンの効率が上がり電気代も少なく済みます。
- 室内の温度ムラが少なくなります。冬期に足下が寒い経験があると思います。これは断熱が足りないだけでなく気密が悪いことも影響します。暖められた空気は上昇します。ここで気密が悪いと、暖かい空気は天井他から屋根裏等へ逃げます。これと同時に逃げた空気と同量の冷たい空気が室内に入り込み、足下が冷える結果となります。
- 花粉除去などを含めた計画的な換気が可能になります。24時間換気扇などで花粉他を除去した空気を室内に取り込むことで、汚染物質の制御が可能となります。気密の悪い建物では、数多くの隙間から外の空気が侵入するため、取り入れる空気を制御できません。
断熱性能について
HEAT20 G1またはHEAT20 G2の基準で設計します。
横浜市・地域区分6 外皮平均熱貫流率UA値 | |||
断熱性能等級4 | 0.87 | [W/(m2・K)] | |
HEAT20 G1 | 0.56 | [W/(m2・K)] | |
HEAT20 G2 | 0.46 | [W/(m2・K)] | |
小さい数値が高性能 |
※UA値の小さな住宅が、必ずしも省エネ住宅とはいえません。
その理由は「建物表面積」「太陽熱」「換気の熱損失」を考慮してないからです。
UA値は、外壁・窓などの熱貫流率(断熱性能値)です。外壁や窓などの表面積(外皮面積)は考慮しない数値です。このため、延べ床面積・UA値の両方が同じ住宅でも、表面積が大きな家は、冬の暖房エネルギーは多く必要となります。
また窓にトリプル硝子を用いると、UA値は小さくなりますが、窓を通して太陽光から得られる熱量(日射侵入率)が低くなり、冬期の暖房エネルギーが増加するケースも生じます。
そして換気による熱損失もUA値には含まれず、暖房エネルギーを減らすための判断としてUA値だけでは十分でありません。
これらの理由からUA値だけで判断せず、暖房エネルギー計算等を行うことで、本当の省エネ住宅の設計・シミュレーションが可能となります。
【解説】外皮平均熱貫流率 UA値とは:
UA値 [W/(m2・K)] = (建物全体から逃げる熱量)÷(外皮の面積)
室内から外皮(天井、外壁、窓、床)を通って屋外へ逃げる熱量を、外皮全体の面積で除した値。
UA値が小さいほど省エネ性能(断熱性)が高いことを示します。
HEAT20: www.heat20.jp >>(外部リンク)
2 耐震性能
人の生命と尊厳を守るために耐震性能は必要不可欠。
地震に強い建物をつくるために許容応力度計算により構造計算を行います。設計基準は耐震等級3です。
私・柴は、耐震性能を追求するため、2011年に大学院に社会人入学し耐力壁の研究を行いました。これまでの研究成果を活かし、耐震設計を行います。
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耐震等級とは
必要な耐力壁の長さ(必要壁量)を満たせば建築基準法上はよいのですが、必要壁量ぎりぎりなのか、または必要壁量よりも数十%多いのかで、当然ながら耐震性能は変わります。
そこで耐震性能を示すものとして「耐震等級」があり、3ランクの指標が与えられ、どれくらい耐震性能が高いのかが数値で表されます。
この耐震等級は、建築基準法とは異なる「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいた制度です。(外部リンク:国土交通省 > 住宅の品質確保の促進等に関する法律 )
構造計算
木造2階建て住宅であれば、「耐力壁の必要壁量チェック」と「バランスのよい耐力壁配置チェック」を行うことで足ります。しかし、SHIBA建築工房は、詳細の構造計算を行い、構造安全性の確認を行います。
許容応力度計算で構造チェックを行います
建物の構造計算の方法として、許容応力度計算があります。
これは、地上3階建て以上の木造建築物や、延べ床面積が500m2を超えた場合などに、この許容応力度計算を行うことが求められます。
一般的な木造2階建て住宅であれば、建築基準法上は、許容応力度計算を行う必要はありません。
しかし、この計算を行うことにより、建物各部に加わる力(応力度)を算出して安全であるかという結果が得られ、より詳細な安全性の確認が可能になります。
また、許容応力度計算は、耐力壁や水平構面(床倍率)の強さ(許容せん断耐力)や、接合部の強さ(許容引っ張り応力)も確認されます。
許容応力度計算の予備知識(エンジニア向け)
許容応力度計算は、本来、各部の応力度を算出して許容応力度以下に納まっているかを確認することです。
(部材の各部に働く力 ≦ 許容応力度)そして許容応力度計算は、弾性領域に納まるかを検討する一次設計であり、「中規模の地震動(東京では震度5強程度)でほとんど損傷しない」ことの検証です。
したがって、この検証だけでは「大規模の地震動(東京では震度6強から震度7程度) 」での安全性が確認出来ないことになります。
そのために、保有水平耐力計算他を別途行えば「大規模の地震動」での安全性を確認できますが、小規模木造住宅において、さらに詳細な構造計算を行うことは現実的ではありません。
そこで、各耐力壁の壁倍率である耐力壁の許容せん断耐力を定める際の評価方法において保有水平耐力の考えが盛り込まれているため、前述の許容応力度計算(一次設計)を行うことで、大規模地震での塑性領域の安全性(二次設計:倒壊しない程度)が担保されることになっています。
地震波動的解析 wallstat
実際に起きた地震波を、設計建物に入力することで耐震性能等をシミュレーションし、可視化するものです。
設計した建物を3次元モデル化し、過去に起きた大地震の地震波などにより建物の揺れなどを動画として見える化することで、倒壊に至る場合は、その原因となる破壊部位等が確認できます。
前述の許容応力度計算に加え、この wallstat による検討を行うことで、耐震等級等の有効性を確認することができます。
※wallstat は、中川貴文氏(京都大学生存圏研究所)により開発されたものです。
上記の動画は、壁の強さの異なる2階建て木造住宅16棟の解析。
手前・左端が80%の壁強さ。一番奥・右端が230%の壁強さ。
(地震波: 1995年兵庫県南部地震;JR鷹取)
耐力壁研究
大学院にて耐震壁を開発し、実物大の耐力壁に力を加える実験と研究を行ってきました。
研究成果を実際の建物に応用し、安全な建物をつくり社会に貢献したいと考え実践しています。
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3 耐久性能
痛みにくく、手入れのしやすい家。
長寿命の家造りのために、耐久性能、メンテナンス性が欠かせません。我々が素材を選び、設計するときは必ず経年変化を考えます。要因は様々あれど、全ての物は少しずつ摩耗し、劣化していくからです。将来的に交換する必要があるものには特殊な部材・設備機器を使わず、一般流通品を用いることで、お手入れがしやすく、長寿命の家になるよう心がけています。