日本の降水量と建物の形

日本は、世界的に見て降水量が多いことをご存じでしょうか。

(以下、国土交通省ウェブサイト「水害対策を考える」から引用)
世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本は、年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均(880mm)の約2倍に相当する。しかも、日本の降水量は季節ごとの変動が激しく、梅雨期と台風期に集中している。
(引用終わり)

上記に、年平均降水量1718mmとありますが、神奈川県横浜の平均降水量を調べました。気象庁・気象統計情報によると1981年〜2010年の年間平均降水量は1688mm(横浜)でした。これは、前述の1718mmの平均値に近い数値です。以下は、横浜の月別の降水量をグラフにしたものです。(気象庁・気象統計情報から作成)
Yokohama mounthly precipitation

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上記、国土交通省の引用文にあるとおり、季節ごとの降水量の変動が大きいのが分かります。最も多い9月と、最も少ない12月とを比較すると約4.3倍になります。

そして、日本の有数の林産地は降水量が多いことを知っていましたが、理科年表(国立天文台 編)の地域別・平年降水量で際だっていた、三重県尾鷲の月別降水量をグラフにしました。(気象庁・気象統計情報から作成)
Owase & Yokohama monthly precipitation

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林産地の一つ、尾鷲の平均降水量と神奈川県横浜を比較すると大きな違いがでました。年間平均降水量で約2.3倍、月別平均降水量では9月で約3倍、尾鷲の方が降水量が多いことが分かります。(尾鷲の林産地へ訪れたことがあり、機会があれば記事にしたいと思います。)

建築を設計する上で、気候は重要な要素です。雨の多い地域に、平らな屋根や、軒の出が少ない屋根をつくることは、高い防水性能が求められたり、耐久性が下がる要因にもなります。自然の摂理に従わず、技術で克服しようとする場合、どこかに無理が生じることが多いものです。

また、窓の上に付ける小さな屋根「庇」を付ける住宅が少なくなりましたが、庇があると小雨位なら窓を開けて換気することも可能になります。昔は自然の猛威に立ち向かえる建築技術は限りがありました。その時代に生まれた建物の形体は、機能を伴ったものであることが多いと思われます。現代のようにデザイン優先で建物の形体を決めると、夏にも日差しが注ぎ込む暑い建物や、自然換気がうまく働かない窓など、エアコンに頼らざるを得ない建物になってしまいます。省エネを考える前に、建物の基本性能を考えて設計することが重要です。