折しも台風12号が3日後の2011年9月3日頃に日本列島に上陸すると思われるため、建物が受ける風の力について記します。
(以下の台風経路図は、気象庁HP>防災気象情報>台風情報、より転載)
※なお、以下の説明は、一般の方にも分かりやすくするため一部を省略しています。
2階建て住宅等を設計する上で、地震力だけでなく、風圧力に対して構造上の検討を行う必要があります。
建物が受ける風圧力は以下の式で計算します。(建築基準法施工令87条、平成12年 建設省告示1454号)
(風圧力:Q)=(q:速度圧)×Σ((Cf:風力係数)×(Awi:見付け面積))
また、風圧力に対する、建物の必要な耐力壁の数量(必要壁量)の計算は以下の式で行います。(建築基準法施工令46条)
(風に対する必要壁量[cm])=(当該階の見付け面積[㎡])×(算定用見付け面積に乗ずる数値[cm/㎡])
<計算例>
風に対する必要壁量=外壁等の見付け面積60㎡×50cm/㎡=3000cm=30m → 合計30m長さ以上の耐力壁が必要
いずれの式も、建物外壁の(見付け)面積に比例して大きくなることが分かります。南風が吹いているとき、建物の南面の外壁面積が30平方メートル、60平方メートルの2つの建物が受ける風の力は、60平方メートルの建物の方が2倍の風圧力を受けることになります。(「見付け面積」は、各階の床高+1.35mより上の見付け面積の和とするのが正確であり、上記の説明は、この意味で説明不足であることをお伝えします。)
この風圧力に対する必要壁量の計算を行い、風圧に持ちこたえる耐力壁量があるかという検討を行います。地震力に対してだけでなく、風圧力に対しても耐力壁(筋かい等)が足りているかの計算を行うのです。ここで意外に感じる方が多いと思われるのは、以下の事項です。
風圧力と地震力の2つの力に対して、建物の耐力壁が足りているかを検討しますが、地震力に対して耐力壁が足りていると計算結果が出ても、風圧力に対して耐力壁が足りないことがしばしばあります。建物形状によっては、地震力よりも風圧力の影響が大きいという判定結果が出ると言うことです。
しかし、風圧力と地震力は、その性質が違います。風圧力は、一般的に一方向から加わることが多いのに対して(南風と北風が交互に吹くことは考えにくい)、地震力は揺さぶるように力の向きが交互に働くこと。そして地震が交互に揺れ動くその時間の長さ(周期)と、建物の固有周期が一致すると建物に大きな影響を及ぼすことなどがあります。
(参考文献:木造軸組工法住宅の許容応力度設計2008年度版・(財)日本住宅・木材技術センター)
追記)
現在施工中の新築建物は、台風による風の影響を避けるために、足場のメッシュシートを撤去。工事とのタイミングが丁度合い、建築に携わる私たちがほっとする瞬間。
「木でつくるEcoハウス」は間もなく完成。