耐力壁の実験的研究 2012年

実物大耐力壁・試験体の試験:鉛直構面の面内せん断試験

試験体A

木材プレカット工場から届いた耐力壁・試験体の木材を、大学院研究室皆さんの手を借りて組み立てます。

試験体Aの組み立て

試験体Aの組み立て作業


柱4本と板材で組んだ後に、土台に柱の長ほぞを差し込み。
第1番目の試験体Aでは板材に流通品で入手しやすいものとしてSPF材を用いました。後の改良型試験体ではSPFをやめて杉板に変更することになります。
試験体Aの組み立て

試験体A


組み上がった試験体を手動式ブロックチェーンで吊り上げて試験機に設置。実物大の試験体は重いため、複数人いてようやく設置できる重量。しかも真夏のため皆で大汗かいての作業でした。
試験体A

試験機に設置された試験体A


柱に黒いものが6個付いているのは変位計。この後の加力試験にて試験体が変形した際に、柱と板材の上下方向のずれ寸法を計測するために変位計を取り付けています。

試験体B

貫材と板材で構成した試験体B

試験体B

貫材と板材で構成した試験体B


試験体Bの柱と貫の接合部に込栓シラカシφ18を打ち込み
試験体B

柱・貫の接合部に込栓φ18


試験体Aの加力試験が終了後、試験体Aをおろしてから試験体Bを設置。加力試験の時間を含めて試験体1つで半日以上を要します。試験体A,B,Cの3体の試験を行うために2日間を要しました。
試験体B

試験機に設置された試験体B

試験体C

長短2種類の横板で構成した試験体C
横板は長短2種類を交互に組み合わせ、長い横板は柱に深く差し込みます。

試験体C

横板で構成した試験体C


横板をドリフトピンφ16で接合した試験体C
横板が左右方向にずれる変形を起こすときにドリフトピンにより抵抗(せん断力)
試験体C

横板同士をドリフトピンφ16で接合


組み上がった試験体Cを試験機に設置
試験体C

試験体Cを試験機に設置

試験体A,B,C 鉛直構面の面内せん断試験

試験体A 面内せん断試験

板材と柱で構成された試験体Aの加力試験

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試験体Aの加力試験


写真には写っていませんが試験体上部の水平材・横架材に水平方向の変形量を図る変位計を含め、柱頭柱脚などに変位計が取り付けられ各部の変位量が記録されます。

試験体B 面内せん断試験

貫材と板材で構成された試験体Bの加力試験
加力は正負交番繰り返し加力。柱脚固定方式とし、ホールダウン用アンカーボルトM16 を鉄骨架台に固定。加力はアクチュエーターにより繰り返し加力の1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50rad の変形時とした。

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試験体Bの加力試験

試験体C 面内せん断試験

長短2種類の横板で構成した試験体Cの加力試験

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試験体Cの加力試験


横板同士の左右・水平方向変位はばらつきがありましたが、この部位の試験終了時の変位は約35mm。
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試験体C 横板同士の左右・水平方向の変位

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横板同士を接合するドリフトピンによるせん断抵抗

試験体A,B,C 試験結果および考察

試験体Aは柱脚ホールダウン金物の耐力が足りず、壁全体が回転するロッキングを起こしてしまい試験体の正確な耐力などの特性値を得ることが出来ませんでした。
試験体Bは剛性が低い結果でした。
試験体Cは試験体Aに比較して剛性が低く、そして組み立てがとても大変であることから施工性も悪いことが分かりました。
より詳しい考察は省きますが、面内せん断試験の試験結果である荷重と変形角の関係のグラフを以下に示します。

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試験体A,B,C試験結果 荷重 – 変位曲線

試験体A 柱脚ホールダウン金物の耐力不足

前述の通り試験体Aは柱脚ホールダウン金物の耐力が足りなかったため、この部位で破壊が生じてしまいました。予想したよりも試験体Aの耐力が大きかったためホールダウン金物の耐力選定が甘かったためでもあります。柱脚接合部分で先行破壊が起きないように改良する必要があります。

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試験体A 柱脚ホールダウン金物取り付け部分の破壊


試験体Aの接合金物・釘を全て取り外して、柱および板材の変形または破壊状況などを確認します。
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試験体A 試験後の解体・釘抜き


柱脚ホールダウン金物取り付け部分の破壊状況です。耐力壁においては柱と横架材(土台・梁)の接合部分が先に破壊してはいけないことが前提です。
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試験体A 柱脚ホールダウン金物取り付け部分


柱脚ホールダウン金物部分で先行破壊したため、本来は耐力を発揮する部分である板材の釘穴の変形量が僅かであることが写真から分かります。
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試験体A 板材の釘穴の変形

試験体Aに改良を加えるための検討

試験体A,B,Cの試験結果から、耐力が高く施工性もよい試験体Aに改良を加えた上で、再度試験を行うことになりました。そのためにどのような改良が必要かの検討を行いました。
(続きます)