パッシブデザインの基本「夏の日差しを遮る」
建物の基本性能(快適な室内温度環境等を得る性能)を高めるパッシブデザイン。
その基本の1つに、夏の日差し、特に直達日射(直射日光)を遮ることがあります。
直射日光は良く聞く言葉ですが「直達日射」は聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
まず最初に広辞苑にて「直達日射」の意味を調べてみます。
直達日射:大気中で吸収・散乱されず、地上に直接到達する日射量。
(広辞苑 第六版より)
和風住宅などの深い軒の出の意味
和風住宅や、法隆寺などの日本古来の建物を見ると、大きな屋根がかかり深い軒の出が確保されています。その理由の1つとして、雨から建物を守ることがあります。
深い軒の出の、もう1つの理由は、夏の室温上昇を防ぐために、夏の日差しが室内に入らないようするためです。
現代では、エアコンなどで室温を制御出来るようになったことから、「洋風」などの見た目だけのデザインで家を設計することが多く見受けられるようになりました。
しかし夏に、窓から室内に日差しが降り注ぐ「高断熱」の家は、お湯を保温するポットのようなものです。窓の室内側にカーテンなどで日差しを遮っても、効果は低く、できれば窓の外側で日射を遮りたいものです。
室内に直達日射が入らなくても暑い理由
私の家は、建物を真南に向けて配置し、軒の出は約1mあるため夏の日差しが室内に入ることはありません。横浜の夏至・南中の太陽高度は約78度です。下図にあるとおり、この太陽光(直達日射)が室内に入らないように、軒の出の寸法などを決定します。
しかし、直達日射が当たってないのに窓に近い部分は床が熱くなり、窓から離れた部分の床は熱くなりません。その理由は、日光が雲(水蒸気)などに乱反射する「散乱日射」と呼ばれる光が室内に入ってくるためです。
雲一つ無い快晴の日は、日なたと日陰のコントラスト(明暗の比)がハッキリしていますが、曇天はコントラストがぼやけます。これは、乱反射してあらゆる方向からやってくる散乱光が多いためです。
散乱日射を防ぐためのスダレ
散乱日射が室内に入るため、直達日射が室内に入らなくても、床が熱くなるなど太陽光の熱影響を受けるのです。特に薄曇りの日は、散乱日射のエネルギーが強く、熱の影響をたくさん受けることになります。
この影響を和らげるために、私の家では「散乱日射」を遮るためのスダレを下げます。繰り返しになりますが、スダレがなくても深い軒の出により直達日射は室内に入りません。
スダレをかけたとき室内は、かつて祖父母が住んでいた藁葺き屋根の家のような薄暗さに包まれると同時に、暑さが和らぎます。
外壁の表面温度計測
南面の外壁の、前面にスダレが付いている外壁と、スダレがない外壁の2ヶ所の表面温度計測を行いました。再び繰り返しになりますが、計測した外壁2ヶ所共に直射日光(直達日射)は当たっていません。
【測定条件】
7月14日(日)、午前10時46分頃
気温:32.3℃(実測値)
風速:東、3 m/sec(気象庁・アメダス 横浜)
天候:晴れ(薄く雲がかかった状態。写真参照)
すだれと外壁面の水平距離:約1m
上の写真にあるとおり、スダレが無い外壁は37.9℃。スダレが付く部分の外壁は35.8℃でした。
スダレが付く外壁は、無い部分に比較して2.1℃低いことが分かりました。ただし、温度測定部分は、スダレの端部に近い場所のため散乱日射の影響を多少受けていると思われます。
天候は上の写真のとおり、晴れていますが薄く雲がかかっています。
うっすらと白い空は、その原因がチリなどで無い場合、空気中の水蒸気が多い(相対湿度が高い)ことが予想できます。
散乱日射を遮ると防暑効果が更に高くなる
日本の夏は、相対湿度が大変高く、夏の空は水蒸気が沢山含まれているため、薄曇りの空になることが多いです。これは散乱日射が多いことを意味します。このため日差しが入らなくても、大きな窓の外にスダレをかけるのは防暑に効果的です。