2013年5月のウェブサイト・リニューアルに伴い、旧ウェブサイトにて紹介していた、奈良県・法隆寺に訪れた時のレポートを、このJournalに移設します。(2013年5月6日)
探訪記
法隆寺
2003年3月、初めて奈良県斑鳩の法隆寺を訪れました。
宮大工棟梁・西岡常一氏の著書をもとに、西岡氏の足跡を辿るように法隆寺を堪能しました。
一人、法隆寺の駅に降り立ち、あまりに質素な駅舎に驚きました。駅からは徒歩で法隆寺へ。
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略歴などは法隆寺Webサイト<http://www.horyuji.or.jp/>をご覧頂くして、私が法隆寺を訪れたことの目的は、日本最古の木造建築であること以外に、著名な宮大工である西岡常一・棟梁の著書に書かれている法隆寺の詳細を、この目で確かめたかったからでした。
駅からの道程に、法隆寺Informationセンターがあり、法隆寺をつくり上げる過程や、宮大工棟梁「西岡常一」に関する展示もあり、法隆寺見学前の知識を得るに良い所でした。
日本最初の世界文化遺産 法隆寺
▲「中門」 右はアップ写真。金剛力士像は隠れていますが、私が撮影したかったのは、エンタシスの「柱」。
▼「廻廊」飛鳥時代のものという。 梁は虹梁(こうりょう)と言い、虹の一片を切り取ったような美しい形をしているもの。
束は人形束などと言い、棟の荷重を分散し2本の柱に伝えるようにしているとのこと。これは西岡さんの著書を手に取りながら眺めていたのですが、先人の知恵に感心しきりでした。
▼同じく西岡さんの本に解説がある廻廊の格子。自然の形のままの木材を使っているのか不揃いですが、それがかえって自然さを感じさせます。
▼下は新しい時代・室町時代につくられたという廻廊。梁も真っ直ぐに製材された木材を用い、太くなっています。そして人形束の中心に垂直の束柱が入っています。右の写真の格子も真四角に均一に作られています。前の飛鳥時代のもとと比較すると面白味に欠けると感じます。
▼もう一度、飛鳥時代の廻廊。比べると全く違います。 西岡常一氏の著書を読みながら廻廊だけでもかなり楽しめます。
私のように廻廊だけで長時間見ている人は見あたりませんでしたが…。
「虹の一片を切り取ったような美しい形」という言葉を実感。
▼手前に見えるのが「金堂」
▼「金堂」 法隆寺のご本尊を安置する殿堂。
▼そして「五重塔」
▼支えている「○○の下の力持ち」は遊び心からなのでしょうか。
▼最初に出てきた「中門」を内側から見る。
古代ギリシャ・ローマ建築に見られるような美しいふくらみを持ったエンタシスの柱ですが、流石に外部に面する部分は風化が進んでいました。
▼「夢殿」聖徳太子の一万円札が無くなってから目にする機会が減りました。
八角形の不安定な屋根を天辺の重い宝珠で押さえ込んでいるとのこと。
虹梁の上に「かえるまた」が組まれて桁や棟木を受けている。天平の建築。この時分の建築は天井がないため屋根裏が天井。そのため、タル木が棟まで見える訳
とのこと。
この解説を読み、時代は輪廻していると感じました。
▼西岡棟梁が作った鎌倉様式の手水舎(ちょうずしゃ)
※写真にある小さな文字は、忘れないように撮影当時書き入れたもの。6年が経過してから、この探訪録をつくれるものこのお陰です。
「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」
旅の楽しみの一つは、その場所特有の「流れている時間」を感じることです。
ここを訪れて、ゆったりとした時間が流れていることを感じ入りました。
正岡子規の有名な句は、このゆったりとした時間の流れ故に生まれたのだろうと思いました。
▼法隆寺を西大門から出て、西岡棟梁の著書に出てくる西里集落の町並みを歩きました。
お勧めの本:『木に学べ』 著者:西岡常一
法隆寺を訪れる際、新幹線でこの本を読みました。
記憶が新たな内に訪れる、この方法は最良であると実感。
この本は、法隆寺を訪れる数年前に購入し、ずっと本棚で眠っていました。
もし建築にもご興味があるのでしたら、法隆寺を訪れる前に、この本を読まれることをお薦めします。
「廻廊」だけでも沢山の時間を楽しむことが出来ます。
いくつかの神社仏閣に訪れていますが、ここ法隆寺は大変好きです。
ゆったりと流れる時間を味わいに、また訪れたいと思っています。
柴 好弘