自然の通風を得るために
機械に頼ることなく、自然の力で通風を得て換気するためにはどうしたらいいか考えてみます。
季節風をとらえる
日本国内でも地域によって、その季節に吹く風向きは異なるものです。
ここ神奈川県横浜市では、夏には南西方向からの風が多く吹きます。
天気予報で「本日は太平洋からの湿った空気が南寄りの風にのって・・・」という言葉を毎年何度となく耳にします。このような風は、正確には「卓越風」といいますが、日常生活ではあまりつかいませんね。(右表は「気象庁統計情報によりExcelにて作成)
風を室内に入れるためには出口が必要
この風を室内に導き入れるためには、風の入り口となる窓だけではなく、出口の窓を設けることが大切です。北側の窓は小さくなりがちですが、出口となる窓をほど良く設置しないと風は通り抜けてくれません。
風向きは季節風(卓越風)の向きに吹く?
家の回りには隣家や障害物がなければ、ほぼ季節風の向きに風が吹きますが、風上に隣家や大きな障害物があったり、道路などで風向きは変化してしまいます。
向きが少し変化した風を導く方法
南面は、開口部を設ければ特に工夫しなくても風は入ってくれるでしょう。しかし側面となる東・西面は袖壁状のもので風をキャッチするなど工夫が必要になります。
様々な具体例がありますが、長くなりますのでここでは触れません。
以上は風圧を利用した通風です。
温度差を利用した換気
風が吹いてないときでも、自然の力で換気をすることが可能です。
暖かい空気は上昇する
暖かい空気は上昇することをご存じだと思いますが、これを利用して室内の空気を排気することが可能です。暖かい空気には浮力が働きます。「熱気球」はその力を利用しています。
煙突効果
このような空気が上昇する力を利用して、天窓などで排気し、その分を下側の窓から空気を取り入れます。この方法は、弊社事務所建物だけでなく、いくつかの実例で効果を確認しています。
(右の写真は「横須賀の家」での実例)
通風は大切。でも暖房・冷房も忘れてはいけません
風の通り道を最優先し、間仕切りのない大きな空間や吹抜などを設けることは、暖房や冷房にとっては効率が悪くなることが多く、全体を考えながら空間を設計することが必要になります。
自然の換気量はどれくらい?
自然換気量は計算できる
正確ではありませんが、上記の風による(風圧)換気と、温度差による換気の換気量を計算により求めることができます。
空気は重たい?
換気量の計算を行うとき、ベルヌーイの式というものが出てきます。
この一番左の項「(1/2)ρV2」流速(動圧)を用います。
この式にある「ρ:空気密度」の数値を入れて計算しますが、空気の密度はおよそ 1.2 [kg/m3](1メートルの立方体の空気重さが約1.2kg)と予想以上に重いことに驚かれると思います。
自然換気だけで大丈夫でしょうか
概略の自然換気量が求められたとしても風は不安定ですし、温度差による換気は、室内と屋外の温度が小さくなると共に換気量も小さくなります。
このように自然任せの換気は安定せず、換気量の調整が簡単ではないため「計画的な換気」には十分ではないと言えます。
しかし夏場に涼を得るための「風」は心地よいものです。
後日の記事にて「涼を得るための通風」を考えてみます。