弊社事務所建物に用いている、再生可能エネルギー利用技術をご覧ください。
再生可能エネルギー・自然エネルギー利用
SHIBA建築工房事務所・併用住宅は、1998年に新築しました。
1998年当時考えられる自然エネルギー利用技術を盛り込みました。
近年の断熱技術の向上や、ヒートポンプ技術、窓の高性能化などにより、現在では最適とはいえない技術もありますが以下にご説明いたします。
太陽熱の利用
日光にあたると暖まります。太陽の「熱」を利用する技術。
パッシブ・ソーラー ダイレクト・ゲイン Passive Solar, Direct Gain
冬の日差しを室内に取り入れ、土間床(コンクリート下地)に日射熱を蓄え(蓄熱)することで、夜間の室内温度低下を防ぐと同時に、日中の室温の過剰な上昇を防ぎます。
このダイレクト・ゲインは、「深い軒の出などによる日射制御」を組み合わせて設計する必要があります。
パッシブ・ソーラーとは、このように機械装置を用いずに、建築的手法により太陽光で暖房などを行う技術です。
空気集熱式ソーラー Active Solar House
屋根にあたる日差しで空気を暖め、暖められた空気を床下に送り、床下のコンクリートと床材に蓄熱させるシステムです。
前述の「パッシブ・ソーラー、ダイレクト・ゲイン」と大きく異なる点は、機械装置が必要なことです。
屋根面で暖まった空気を、床下に送り込む機械装置は、主に送風機(ファン)と、空気流れ方向を変えるダンパーで構成されており、この機械装置により、夏モード、冬モードの切り替え、室温制御が可能になります。
日々の制御は、外気温、室温、屋根集熱温度を検知しながら、太陽熱を室内に取り入れるか否かの判断が、設定に応じて自動的に行われます。
潜熱蓄熱体 PCM(Phase Change Material)の利用
空気集熱式ソーラーで暖められた空気を、床下に送り込み、基礎の土間コンクリート部分に蓄熱するのが通常ですが、SHIBA建築工房事務所では、床下にコンクリートがない中2階と、2階居室の床に蓄熱させるため、潜熱蓄熱体・PCM(Thermal strage with Phase Change Materials)を用い、蓄熱する試みを行いました。
潜熱蓄熱体・PCM:ある物質が固体から液体、または液体から固体に変化するとき、潜熱が吸放湿されます。このときに加えられたエネルギーは、液体・固体間の状態変化のためだけに費やされ、このことにより蓄熱作用が起きます。この作用を蓄熱体として利用するものです。具体的な例では、氷がゆっくり溶けるとき、融点である0度付近を保ちながら水に変化することが挙げられます。
仮に融点が30度の潜熱蓄熱体・PCMを用いれば、PCMに蓄えられたエネルギーが放出される状態のとき、30度を保つ働きを示します。
太陽熱で給湯
太陽の熱でお湯を沸かし、約250リットルの保温タンクにお湯を貯めています。これは空気集熱式ソーラーの補助的技術により、お湯採りを実現しています。
東・西面の日射遮蔽
前述の「ダイレクト・ゲイン」は、軒の出等による日射制御が行えるように、「南面の窓」から入る日射を利用することが通常です。
東と西からの日差しは、低い角度から太陽光が差してくるため軒の出等による日射制御ができません。そして特に西側窓から入る「夏の西日」は夏期の室温上昇につながるため、窓より屋外側で日差しを遮ることが重要です。
その方法の1つして、熱線反射ガラス・Low-Eガラスを、東・西の窓に用いています。
太陽光の利用
太陽の「光」を利用する技術。
北側天窓からの採光
書斎、勉強部屋などに必要な明かりを自然光に求めるとき、北側窓から入る自然光利用が大変有効です。その理由は、日中を通じて明るさが安定し、直射日光という限界を超えた明るさ(グレア・glare)がないためです。
北側の窓から入る自然光を利用する方法以外に、北側の屋根に設置した天窓から入る自然光を用いることも有効です。そして、天窓から入る自然光は、通常の窓の3倍の明るさが得られる計算になります。
太陽光発電
太陽光発電はご説明するまでもありませんが、異なる点は「発電」と「集熱」を同時に行っている点です。「集熱」は前述の「空気集熱式ソーラー」により行っています。
太陽光発電 + 空気集熱式ソーラー Hybrid Solar House
この「発電と集熱を同時に」を実現するために、太陽光電池はアモルファス型を採用しています。アモルファス型太陽電池の特徴は、屋根材である金属板に太陽電池を貼り付け一体化しており、見た目も厚みがなく、とても軽いことが挙げられます。
自然換気、通気
温度差による自然換気(重力換気)
暖かい空気は上昇する力を持ちます。この力を利用したのが熱気球です。
北側の屋根に設置された天窓から、夏期の暑い室内空気が上昇する力を利用して排気することで、屋外の空気を室内に取り込み、自然換気が行われます。それに加え、夏期は南寄りの風が吹く頻度が高いため、風圧力が加算され、北側天窓からの排気による換気は大きな効果を得ることができます。
外壁通気工法
高断熱住宅が普及してきた現在では、外壁通気工法は必要不可欠な技術になりました。壁仕上げ材と、柱との間に通気層をつくり、通気層を流れる空気により壁に滞留する湿気を排除します。この通気は、通常温度差による自然換気により行われます。
雨水利用
雨水タンク
雨樋に雨水タンクを接続する簡単な方法は低コストで実現が可能です。
250リットルの雨水タンクを2台設置し、植木の水やりに用いています。
木材利用
木材は、光合成により成長し、木を伐採しても植林することで、およそ30年スパンで考えれば永続的に用いることが出来る材料です。
そして、木造住宅の製造エネルギーは、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて少なく、断熱性能も、鉄・コンクリートに比較して優れています。
建物の内装・外装への木材利用
土台は桧、柱は、国産の桧と杉を用いています。
屋外の軒裏天井と、室内の壁・天井には信州産カラマツ。室内の壁と床の一部には青森ヒバを用いました。
薪ストーブ
炎を見ながら暖を取れる薪ストーブは、着火に手間取り、薪の入手と保管など大変なこともありますが、諸条件が満たされれば、よい選択肢の一つであると思います。
薪をお店から購入する場合は、薪の購入費用を、エアコンなど他の暖房費用と比較すると安くはないため、光熱費を第一に考える方には向かないかもしれません。
しかし、炎は人を引き寄せる力を持ちます。それは暖かさだけでは言い表せない魅力があります。
温度計測の記録
1999年2月6日から2月21日の期間、1階と2階の部屋を各8日間、温度・湿度の計測を行いました。
晴天時はエアコン等の暖房器具を使用してない、「暖房なし」の室温データです。
朝の室温を見ると分かりますが、暖房なしでも、室温が外気温より15度程度高いことが分かります。
(2月6日の朝:外気温2.3度、室温17度など)
繰り返しになりますが、この建物は1998年に新築しました。
現在の断熱・気密技術を用いれば、更なる室温の安定化を図ることが可能です。