答えが画一的でない理由

環境や条件により答えは変わる

情報の選択眼

家づくりについて勉強し始めると分からないことが多く、様々な情報の中、どれを信じてよいか分からなくなりませんか。住宅メーカー等から与えられる情報だけでは満足できず、より多くの情報を収集し勉強を重ねた結果、確信に近いものをお持ちの方(建築主)も居られますが、そのような時、私共は少し不安を抱きます。建築主が家づくりの勉強を深めるといっても、実際に建築工事に携わるわけではありませんので、メーカー公表の数値性能等による判断になりがちで、表面的な理解や机上の理論にとどまることが多いと思われます。インターネットを通じて施工者および施主の記事から情報を得ることも出来ますが、情報発信者の知識レベルおよび中立性を知ることは簡単ではないため、多くの情報を得ても選択できず混乱してしまうのです。情報発信者のレベル・中立性が分かって、初めて情報の正確さ・方向性が分かります。

エキスパートの考え

断熱材を例に挙げると、断熱のことを専門に研究しているエキスパートでさえ、10年前と現在とでは推奨する内容に違いが生じています。これは当初、最善と思われた事柄の経年変化を知り改善・修正したことや、断熱材や関連する材料・工法に高性能のものが開発されたこと、または断熱基準が更に高いレベルに変わったこと、その他様々な要因が考えられます。専門家が考える「今現在の最善の方法」であっても、その答えは時代とともに変化していきます。これを一般の方が、推測・判断して「今現在最善と思われる方法」を選択することは大変難しいです。

最善の答えを導く 「中立性」

私共は住宅建築、特に木造軸組在来工法専門で家をつくり続けてきた中で、建材メーカー公表の性能だけではなく、経年変化をこの目で確かめています。そして様々な側面から建材および工法等を検討すると100%の利点を持つものはほとんどなく、何らかの欠点を持っているものです。各メーカーは自社製品の欠点を公表しません。それらを知ると、特定の材料・工法を手放しで勧めることが出来なくなります。
私共に出来ることは、様々な設計条件を考慮した上で、今現在最善と思われるものを選択することです。言い換えれば「設計条件」と「材料・工法の利点・欠点」の組み合わせの中で、より合致するものを選択するということです。これが私共の提案の方法です。この方法は中立性を保ち、客観的判断が行えると考えています。したがって、手放しで特定の工法等を推奨することはいたしません。このため、私共の考え方を直感的にご理解いただくことは難しいかもしれません。

より良い答えを出すために

私共は設計だけに留まらず、メンテナンスにまで携わり経年変化を確認することになるため、新たに開発された材料や工法等の採用には慎重になりがちです。例えば、柱や梁などの建物構造に用いる(木質)集成材は、数値性能としては良いのは分かりますが、経年変化ほか様々なことを考慮すると、簡単に選択できなかった経緯があります。これは経験が邪魔をしているともいえ、経験が負の側面とならないためにも、客観的に、より良い判断が出来るよう最新の情報を得るよう心がけています。そして2011年度から大学院にて、より高度なレベルで木構造の研究活動や建築学の勉強を深めることになりました。